酔記

美に殉死 愛の闘争

2023-01-01から1年間の記事一覧

小さな自慰

青い琥珀洗練された修辞法美女の下痢 私はぐるぐると粘膜の滑り台を落ちていった怯えて、怯えて 最後に鼓膜が破れて、死んだんだ!

ヴェール

酩酊は俺をどこにも連れてゆかない接吻の冷たい痛みに震えながら冷たいというのはこんなに美しかったっけと俺はもう一度、背中を丸めた 眼下の闇にはだだっ広い河原が息をしていて育ちの良いレース刺繍は呆気なくほどかれてゆく 俺は正直飽き飽きしている愛…

キャンバス

まっ白なキャンバスのまっ白な真ん中に俺はぽっかり浮いているまたとない有象無象の夢が瞬くように泳いでは消え放縦なヴィーナスの如く冷たい布地に跳ね散る (暗転) まっ黒なキャンバスのまっ黒な真ん中に俺はぽっかり浮いているまたとない有象無象の夢が…

ダビデ

君は石だ鏡に非対称性を捧げ酔い潰れたメデューサの紅い毛髪の朽ち果てた瞳の重さを受け止める 太陽を月をとてつもなく大きな光を人々は称揚するが誰にも見えないのだろう対称性の向こうに消えそうな目の輝きを眩い嘆きを 燃え尽きた命の星を蹴り飛ばして夜…

蜘蛛の糸

きらびやかな嘘の潮風に零れ落ちた太陽のしずくを探して錆びた始発列車に飛び乗った 昨晩からどうにも内臓は愛情に飢えて力なく千切れた脳をぶらりぶらりと引っかけたままどれが本当の俺なんだろうと朝まで問う 咎めたければ咎めれば良いさ俺は窓外に目をや…

呼吸

光は追わなければならぬそれは盲従ではなく、純心の淘汰である 淡い出来心で駆け上るガラスの慈悲の螺旋階段はどこへも通ずることなく造花の薔薇の台座となる 消えゆく光のボルボックスを痙攣する薔薇に重ねて押し返す粘性の情熱を閉じた瞼に乗せた 早朝の青…

悪い夢I

地獄の隅をモンシロチョウが舞う剥がれ落ちた虚栄の粒は二度と帰らぬ鱗粉となる 深緑の表層は裸の真珠に呑まれ形骸化した蹄が風のリボンを踏みしだくこの地獄を眼前にして清澄たる翅は異国の波となるという (オレンジ色の無人島) めくるめくエントロピーの砂…

招待状

紳士淑女をなお超えて 美麗の微笑む皆様方へ さあ倦怠した虚像に何を託そう細胞活動をつぶさに成し遂げるべく流動する柱を再構築する世界 或いは今ここに託すべきかもしれぬ豪奢なシルクをふんだんに重ねてウールやコットンをしとど纏い潰えぬ星屑のごと静脈…

沈丁花

銀の触手は永遠となり或いは冷たい月となり今宵も踊る 心臓のワルツ 赤らんだ君の頬はすっかり夜の水に透けて恐怖と恍惚を押し流してゆく おお、この瞬間こそ生であると琥珀は蟲を閉じ込めたツイード生地の鱗粉を薔薇色の裸に散りばめて 俺の記憶じゃ間違い…

顕微鏡

それはまるで溶けだした柑橘類のように濡れたうなじを舌で拭う しどけない死の匂い 一方俺は墨汁の香りをコトコトと楽しみながら薄暗い花屋の奥で無意識を抱き寄せる あんたも罪だねえ 乾杯 また乾杯 それから並んでリボンを毟る一粒一粒、ささくれた汁を撒…

時の皺

砂と煙に呑まれて拾えぬ記憶が一つ何事もなかったかのように踊る水の精は私の瞳をじっと見つめる あの日の言葉が川からこぼれる水草に絡むあぶくは僕の心にも…… くすんだ筆跡と雪解け水の光沢どこにも存在しない心は影を伸ばすたび気まぐれな記憶の住人となる…

ナーズローに捧ぐ

埒を開けよう!純白の血気を失うことなく秋空を奔走する可憐な毛糸 嗚呼、悲しき星の定めか鈍色の人間たちは彼女を嗅ぎ分ける散逸するルビーの潮風は誰よりも遠くに届くのだから ナーズローの温もりは物質の夢を夜に捨てただ一輪の睡蓮に 已むを得ん、日記を…

現代讃美歌

日本社会はEDである見給え不能な若人たちをプラトニックな恋人たちの疲弊に潰れし魂を「今どきの若者は」カカカカカ!嗚呼古今東西 ユビキタスこれこそ我らが定めですぞ 効率簡便単純を醜悪矛盾複雑性は一切合切認めませんあいつはとうとうEDにそれが最もブ…

境界と悪魔

慇懃無礼な信仰に身を弄び 花嫁は独りオレンジを啜る メケメケと剥け散る皮の匂いは 現代社会を濃霧に包み やがて落ちゆく道徳の花 限りなく白く あらゆる汚濁をシルクで覆い あるいは酸に溶かして 幾重にも幾重にも 死んだ肉体 やがて消えゆく道徳の花 蝕む…

セイレーンが啼く

セイレーンが啼く陰惨な雨 憧憬の岩虹色の甘藻を悴む指に肌の粒 翼の鱗 すべて落ちて屍の匂い いと芳しく 曇天を穿つ巨大なドリル有機物の塊 したたる甘藻歯車の動脈は膨れ上がり轟轟たるその溝に鴎は卵を産み落とす潰れぬように…… 誰が守る?この巨大なドリ…