酩酊は俺をどこにも連れてゆかない
接吻の冷たい痛みに震えながら
冷たいというのはこんなに美しかったっけと
俺はもう一度、背中を丸めた
眼下の闇にはだだっ広い河原が息をしていて
育ちの良いレース刺繍は呆気なくほどかれてゆく
俺は正直飽き飽きしている
愛の啄ばみも 質素な常識も
インテリの黄色い笑顔も
澄み渡る虚栄も
なにひとつ、俺の瞳孔に値しない
なにひとつ
俺は暗闇に唇を探した
いつの間にレースはほどけきって
彼女の白い肉が川に濡れていた
真に耐えがたいのは、腐敗ではなく、停滞である
夜明け前の濃厚な静けさに
小さな肉体が流れてゆくのを見届けると
大衆が忘れ去った凍てつく接吻を
俺もまた川に放り投げて
太陽の梯子を待った……