酔記

美に殉死 愛の闘争

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

秋川の死

翌朝、私と秋川は六時ごろに宿を出て、まだ日の上りきらぬ道路沿いを散歩することにした。部屋に上着を取りに戻った秋川を外で待ちながら、私は植え込みの葉の縁を指でなぞっていた。昨夜の出来事は一体何だったんだろう?この朝の冷気が何もかも薄めてくれ…

骨踊り

芍薬の妙技に耐えかねて軽妙な小踊りをいざ犬犬犬!犬まで踊る飲めや歌えや大騒ぎほれ豆絞りすら靡かせて月に梯子を立てかけようじゃんけんぽんのあっち向いてホイ!次はあんたの番ですながたつく梯子に揺さぶられさらに蹌踉めく心持ち銀色の月光!照らされ…

猟犬と美少年

緋色の布につつまれて猟犬の艶 零れ落つ瞳は琥珀の鏡のごと白銀の森と美少年をあれをごらん!夢に滴る断末魔乱れし毛皮の雪化粧木々のオペラの渦潮に胡蝶の涙は白く舞う雪温く 臓物は香るあの子は森の人気者時を染めゆく黒髪は誰も知らずに夜を知る嗚呼 本当…

回転木馬

まわるまわる世界はまわる回転木馬は泣き濡れてレンガの壁を這う虫の足音に似た猜疑心あの音は一体何だろう!俺が嫌いなあの音は長椅子で草臥れる俺の睫毛を撫で回し日々忍び寄るあの音は巡る季節の生活の鈍い切れ目に染み込んでは我が安寧を盗み去る厭よ厭…