2023-10-26 沈丁花 銀の触手は永遠となり或いは冷たい月となり今宵も踊る 心臓のワルツ 赤らんだ君の頬はすっかり夜の水に透けて恐怖と恍惚を押し流してゆく おお、この瞬間こそ生であると琥珀は蟲を閉じ込めたツイード生地の鱗粉を薔薇色の裸に散りばめて 俺の記憶じゃ間違いなくあの夜は沈丁花が咲いていた螺鈿のリードじゃ鳴らないはずの永遠の蠢きを俺は見た やがて無慈悲にあっけなく世界は夜明けの手を引いて 俺は賀茂川を 君は高野川を無意識に遡り寝床を探す触れ得ぬ林檎を抱きしめて 俺たちは未だ生を知らない