酔記

美に殉死 愛の闘争

セイレーンが啼く

セイレーンが啼く
陰惨な雨 憧憬の岩
虹色の甘藻を悴む指に
肌の粒 翼の鱗 すべて落ちて
屍の匂い いと芳しく

曇天を穿つ巨大なドリル
有機物の塊 したたる甘藻
歯車の動脈は膨れ上がり
轟轟たるその溝に鴎は卵を産み落とす
潰れぬように……

誰が守る?この巨大なドリルを
生命を抱えて軋む塊を
セイレーンが啼く
うなじ震わせ
セイレーンは啼く
喉涸れるまで

おお、クシュドメールよ

昨晩も亡骸を数えた

おお、クシュドメールよ

私は幸せ

だからお願い
中に来ないで
とっても、甘いでしょ?
それで良いの……

おお、クシュドメールよ
舌無き骸よ
気高き地獄よ

 

汝はなぜ此処に?

 

おお、クシュドメールよ
その、愛しい内臓