酔記

美に殉死 愛の闘争

悪い夢I

地獄の隅をモンシロチョウが舞う
剥がれ落ちた虚栄の粒は
二度と帰らぬ鱗粉となる

深緑の表層は裸の真珠に呑まれ
形骸化した蹄が風のリボンを踏みしだく
この地獄を眼前にして
清澄たる翅は異国の波となるという

(オレンジ色の無人島)

めくるめくエントロピーの砂塵に
安らかに身を委ねて
液体金属の脆い母性は
永劫の音を奏で溶けてゆく

もう大丈夫…

安堵は翅を毟り去る