酔記

美に殉死 愛の闘争

2023-09-20から1日間の記事一覧

顕微鏡

それはまるで溶けだした柑橘類のように濡れたうなじを舌で拭う しどけない死の匂い 一方俺は墨汁の香りをコトコトと楽しみながら薄暗い花屋の奥で無意識を抱き寄せる あんたも罪だねえ 乾杯 また乾杯 それから並んでリボンを毟る一粒一粒、ささくれた汁を撒…

時の皺

砂と煙に呑まれて拾えぬ記憶が一つ何事もなかったかのように踊る水の精は私の瞳をじっと見つめる あの日の言葉が川からこぼれる水草に絡むあぶくは僕の心にも…… くすんだ筆跡と雪解け水の光沢どこにも存在しない心は影を伸ばすたび気まぐれな記憶の住人となる…