酔記

美に殉死 愛の闘争

時の皺

砂と煙に呑まれて
拾えぬ記憶が一つ
何事もなかったかのように
踊る水の精は
私の瞳をじっと見つめる

あの日の言葉が
川からこぼれる
水草に絡むあぶくは
僕の心にも……

くすんだ筆跡と
雪解け水の光沢
どこにも存在しない心は
影を伸ばすたび
気まぐれな記憶の住人となる

あの日の言葉が
川からこぼれる
ベルベットの時の皴を
握り崩して……